レーザー測定機器の可能性を知る。他の測定方法との比較結果も解説
はじめに
概要
レーザー測定技術は、産業界における精密測定の要となっています。レーザー測定には非接触・高精度・リアルタイム性という優れた特徴があります。半導体製造では、ナノメートル単位の寸法測定が不可欠で、レーザー干渉計なしでは現代のスマートフォンも作れません。また、建設現場での3次元測量、自動車製造ラインでの部品検査、さらには医療機器の品質管理までその応用範囲は広がる一方です。
この記事ではレーザー測定の基本と他の測定技術との比較、そして三次元測定機を紹介しています。
レーザー測定の原理と性能
レーザー測定の原理
レーザー測定の原理は大きく3つあります。
- 三角距離方式
- 位相差距離方式
- 光パルス方式
「三角距離方式」は対象物に照射された後、反射して返ってきた光を受光レンズを介して受光素子(COMS)で結像し、距離を測定する方式です。対象物に近づくと受光するときの角度が変わるため、結像される位置が変化します。このとき、結像位置の変化量から、対象物との距離の変化量を算出することで、対象物との距離を把握できます。
それに対して「位相差距離方式」は複数に振幅変調させたレーザーを照射し、反射して戻ってきた光の位相差から対象物までの距離を算出する方式です。
光パルス方式は照射した光が対象物に反射して戻ってくるまでの時間を測定する方式です。光の速度と組み合わせることで、対象物までの距離を算出できます。
また、光の干渉(重なった光が強め合ったり弱め合ったりすること)を利用して距離を測定する干渉計もあります。
レーザー測定で測定できるもの
レーザー測定機器を使用すると、対象物までの距離が測定できます。また、連続的に使用すれば形状(表面の凹凸)も測定できます。
性能の要素
レーザー測定機器においては、次のような要因が測定精度に影響を与えることがあります。
- 分解能
- 測定範囲
- 環境条件への適用性
分解能とは計測できる最小単位のことです。分解能が高いほど(値が小さいほど)より精密な測定が可能となります。測定範囲はレーザー光が届く距離によって変わってきます。強い光ほど遠くまで届くため、測定範囲が広くなるのです。
レーザー測定機器は「光」を利用して測定します。そのため、強い外光(太陽光)や温度など、外的要因によって測定精度が変化します。
レーザー測定機器の購入検討ガイド
選定ポイント
レーザー測定機器の最大のメリットは測定精度です。そのため、どの程度の精度で測定する必要があるのか見極めなければなりません。また、測定範囲や測定にかかる時間も重要です。使用する環境や使用する人のことを考えて、あくまでも現場で使いやすく、かつ所望の測定を必要な精度で行えるレーザー測定機器を選ぶようにしましょう。
価格と機能のバランス
分解能が高いほど、そして測定範囲が広い(長い)ほど価格は高くなる傾向になります。また、測定時間や温度補正機能も価格に関係する要素です。測定目的に沿った精度や機能をもつレーザー測定機器を選ぶようにしましょう。
新たなレーザー測定技術の探索
最新技術のトレンド
レーザー測定技術の最新トレンドのひとつとして挙げられるのが、LiDARです。LiDARとはLight Detection And Rangingの略称で、車の自動運転に用いられるものです。常時レーザー光を照射することで、周囲を走行する他車や障害物までの距離、あるいは形状を把握します。測定結果を超高速で処理することでリアルタイムの3Dデータを常時生成しながら、人間と同じように状況を判断して車を走らせます。
中国の湖北省やアメリカのカリフォルニア州では、既にロボタクシー(自動運転タクシー)が実用化され、民間利用が開始されています。日本国内でも、各地で自動運転の実証実験が行われていますが、ロボタクシーのような無人運転は実現していません(2024年10月現在)。
未来の可能性
近年、発展のめざましい技術のひとつがAIです。レーザー測定技術においてもAIの活用方法が検討されており、AIを利用した自動校正(キャリブレーション)やデータ解析の自動化などが期待されています。
他の測定技術との比較とメリット・デメリット
他の測定技術の紹介
レーザー測定の他には、以下のような測定方法があります。
- 超音波測定:超音波の伝播速度や減衰量を利用して測定する方法。
- 光学測定:光学技術を用いて非接触で測定する方法。画像を用いて測定する。
- 接触式測定:ノギスやマイクロメーターなど、被測定物に接触して測定する方法。
比較分析
レーザー測定技術と、前述の3つの測定技術を一覧表にまとめて比較すると、表1のようになります。
表1.レーザー測定技術と他の技術の比較
レーザー測定 | 超音波測定 | 光学測定 | 接触式測定 | |
精度 | 1μm〜1nm | 約1mm | 0.1μm | 10μm |
導入コスト | 最も高い | 安い | 高い | 最も安い |
適用範囲 | 距離や形状(表面の凹凸)など | 厚さなど | 幅・高さ
(二次元) |
幅・高さ・奥行き
測定器に収まる範囲 |
最適な技術選定のためのガイド
表1に示すように、適用範囲(用途)によって測定機器の種類や精度は異なります。また、精度は最高レベルのものを示しているため、必要精度によって測定器のレベルを変えることも可能です。必要な用途と精度を考慮したうえで、最適な測定機器を選定しましょう。
三次元測定機マイクロビュー
6種類のオプションで15種類の幾何公差を測定可能
Micro・Vu(マイクロビュー)には追加可能な6種類のオプションがあります。
- 画像測定:世界最高輝度の照明を利用した非接触測定が可能
- タッチプローブ測定:平面で見えない側面の形状が把握可能
- レーザー測定:深い穴・溝や複雑な凹凸などが測定可能
- 白色光スキャナー測定:透明な被測定物の形状・輪郭が把握可能
- 回転測定:被測定物を回転させることにより、側面や裏面が測定可能
- プラテン測定:薄い・柔らかい・動きやすい被測定物が測定可能
オプションを利用することにより、最大15種類の幾何公差が測定可能です。
- 両側交差
- 真位置度RFS ※RFS=Regardless of Feature Size:要素サイズの影響を受けない実体公差方式
- 真位置度MMC ※MMC=Maximum Material Condition:最大実体状態
- 真位置度LMC ※MMC=Least Material Condition:最小実体状態
- 真直度
- 真円度
- 平面度
- 直角度
- 平行度
- 傾斜度
- 同心度
- 線の輪郭度
- 面の輪郭度
- 円周振れ
- 全振れ
小型〜大型の豊富な製品ラインナップ
Micro・Vuは小型〜大型までラインナップがあり、次に示す被測定物に対応可能です。(X,Y,Z 単位:mm)